人生いいときもあればつらいことが起こることもあります。複雑でストレスの多い現代社会では、気分が落ち込んだりむなしい気分になることは珍しいことではありません。
たいていの場合は原因が解消されたり、気分転換をしたり、時間が経過することで次第に癒され回復していくものです。しかしときにいつまでも気分が沈んだまま回復しなかったり、からだにまで不調をきたすことがあります。このような状態が「うつ病」です。うつ病は特別な人がかかる病気ではなく、誰でもかかる可能性があります。
うつ病がなぜ起こるのかはまだはっきりとは分かっていませんが、うつ病を引き起こす原因は一つではないことが明らかになっています。うつ病になりやすい気質(性格傾向)やうつ病を引き起こすきっかけとなるストレス(環境要因)があり、様々な要因が複雑に結びついてうつ病が起きると考えられています。
環境要因は、学校や社内でのいじめ、受験や仕事での失敗、家庭内のトラブルや家族や親しい人との死別など悲しい出来ことだけでなく、結婚や妊娠・出産、昇進や栄転、引っ越しなど、ポジティブな出来事であっても環境が大きく変化することは精神的な負担になりやすく、うつ病を引き起こすきっかけとなることがあります。
うつ病になりやすい性格傾向は、まじめで責任感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、凝り性、周囲に気を使いすぎるなどの特徴があります。ストレスを我慢しすぎる人が多く、ギリギリまでがんばって心が疲れ切ってしまい、うつ病を発症します。
これらの要因によってうつ病を発症している時、脳の中はどうなっているでしょうか。
感情や意欲は脳が生み出すもので、その働きになんらかのトラブルが起きていると考えられます。脳の神経細胞から神経細胞へ情報を伝達するのは「神経伝達物質」です。このうち人の感情に関する情報を伝達するのは「セロトニン」や「ノルアドレナリン」ですが、これらの物質の機能が低下し情報の伝達がうまくいかなくなることで、うつ病の状態が起きていると考えられています。